ラーンの大斧が埃まみれの壁を叩き割り、崩れ落ちる石の雨の中にイシェが素早く潜り込んだ。
「あの奥だ、急いで！」
イシェの声がかすかに聞こえた。ラーンは巨大な斧を肩に担ぎ、後ろ髪を引かれるように狭い通路を進んだ。テルヘルは彼らよりも少し後ろをゆっくりと歩いていた。彼女はいつも冷静で、周囲を警戒している様子だった。
「あの遺跡の奥には、ヴォルダンが盗み出したという古代の武器があると噂だ」
テルヘルが言った。ラーンの耳に届く声は、いつもより少し低く、重かった。「氏族の者が所有していたものらしい。強力な力を持つと言われている」
イシェは振り返りながら、「そんな噂を信じるなよ。遺跡に眠るものは危険なものばかりだぞ」と注意した。だがラーンの心はすでに冒険の熱で燃え上がっていた。古代の武器、そしてヴォルダンへの復讐。彼の胸に渦巻く様々な感情が、彼をこの遺跡へと駆り立てていた。
通路の先に広がる巨大な石室。壁には複雑な模様が刻まれ、中央には祭壇がそびえ立っていた。祭壇の上には、光る球体が静かに浮かんでいた。
「あれが…」
ラーンは息を呑んだ。テルヘルはゆっくりと祭壇に近づき、球体を手に取った。「これでヴォルダンへの復讐が始まる」
彼女はそう呟きながら、球体から発せられる不思議なエネルギーを感じ取っていた。その瞬間、石室の壁から不気味な音が響き渡り、影が動き始めた。ラーンは剣を構え、イシェも準備を整えた。彼らには、遺跡の守護者たちの怒りが、今まさに降りかかってくることを知らせる、本能的な危機感があった。