ラーンが「大穴」だと豪語する遺跡の入り口は、いつもより湿気と不気味な静けさに包まれていた。イシェは眉間に皺を寄せ、テルヘルが用意したランタンの火が揺れる影をじっと見つめた。「何か変だ…」彼女の言葉にラーンは軽く笑みを浮かべた。「そんなこと言わずに、早く中に入ろうぜ!今日は必ず何か見つけるぞ!」
だが、遺跡の中は異様な静寂に包まれていた。いつもならネズミや虫の音が聞こえるはずなのに、今回は何もなかった。テルヘルが慎重に足音一つ立てずに進む様子を見て、イシェは背筋がゾッとする感覚に襲われた。
奥深くまで進むにつれて、壁には奇妙な模様が刻まれており、イシェは不吉な予感を覚えた。まるで警告のように見える複雑な文様は、どこかで見たことがあるような気がした。
「これって…」イシェが呟くと、ラーンが興奮した様子で言った。「おい、イシェ、見てみろよ!これはすごいぞ!」彼の指さす先には、宝箱のようなものが置かれていた。
しかし、イシェは何かがおかしいと直感した。宝箱の上には、毒々しい緑色の液体が滴り落ちており、その臭いは腐敗した肉を思わせるものだった。「ラーン、待て!あれに触るな!」
だがラーンの耳には届かなかった。彼はすでに宝箱を開けようとしていた。イシェは必死にラーンの腕をつかもうとしたが、遅かった。宝箱が開かれると同時に、緑色の液体がラーンの顔面にかかり、彼は悲鳴を上げた。
「ラーン!」イシェの声が響く中、テルヘルは冷静に状況を見極めていた。彼女はラーンの様子を見て、すぐに毒殺だと判断した。そして、その背後にヴォルダンとのつながりを感じたのだ。