「おい、イシェ、これ見てみろ!」ラーンの声と共に、埃まみれの石版がテーブル上に置かれた。イシェは眉間に皺を寄せながら、石版の表面を指でなぞった。「何だこれは?また変なシンボルか?」
ラーンは興奮気味に言った。「いや、違うぞ!これは古代語で書かれてるんだ!きっと遺跡の地図か何かだ!」
イシェはため息をついた。ラーンの宝探し熱にはいつも付き合わされてしまうのだ。「ラーン、そんなのただの石版だよ。何百枚も見たことがあるわ」
その時、テルヘルがテーブルに深々と座り込んだ。「面白いものが見つかったのね。それは地図ではないかもしれないけれど…」彼女は鋭い目を石版に向け、ゆっくりと呟いた。「危険な場所を示している可能性もあるわ」
イシェは背筋がゾッとした。「何のこと?」
テルヘルは薄暗い瞳をラーンに向けた。「この遺跡の奥深くには、ヴォルダンが渇望する毒の秘薬が眠っているという噂があるのよ。その毒は一度触れるだけで命を奪うと言われているわ」
ラーンの表情が曇った。「そんな危険な物、俺たちは探したくないぞ…」
「でも…」テルヘルは冷たい微笑みを浮かべた。「もしあの毒を手に入れたら、ヴォルダンに復讐を果たせるかもしれないわね。そして、あなたたちにも莫大な報酬が約束されるでしょう」
ラーンの視線は石版から離れなかった。イシェはラーンの背筋が震えているのがわかった。危険な誘惑と、自分たちの運命が絡み合い始めているのを感じていた。