「おい、イシェ！今日はいい感じの場所を見つけたぞ！」ラーンの声がビレーの朝霧を切り裂いた。イシェは眠ぼけの目をこすりながら、ラーンが興奮気味に見せる地図を覗き込んだ。確かに、そこに記された遺跡の位置は、いつもより街に近い locationだった。「まあ、そうか。でも、本当に大穴があるわけないだろう」とイシェは呟くが、ラーンの顔を見れば、彼の熱意が伝わってくる。
「今回は違う！絶対何かあるって気がするんだ！」
いつもならイシェはそんなラーンの言葉に冷静に反論するのだが、今日は少し心境が違った。最近、街の雰囲気は重く、政治的な争いが激化していることを感じていた。そして、どこか落ち着かない気持ちから逃げるように、ラーンの遺跡探しの話に耳を傾けていたのだ。
「よし、じゃあ準備だ！」とラーンはいつも通り、軽やかに動き出した。イシェも重い腰を上げ、テルヘルが用意した道具を確認しながら、彼の後を追った。テルヘルは今日はいつものように、冷静かつ鋭い眼差しで二人を見つめていた。「今日の探索、何か特別な目的があるのですか？」イシェが尋ねると、テルヘルは小さく頷きながら言った。「情報を得るために、今回は少し危険な場所に行く必要がある」
遺跡の入り口付近で、ラーンとイシェは少し緊張した顔つきになった。いつもより荒れ果てた様子で、不気味な静けさが漂っていた。「何か変だぞ…」ラーンの声に、イシェも深く頷いた。
すると、テルヘルが背後から手を挙げ、二人を制止する。「待て。何かいる」と彼女は耳を澄ませながら言った。「聞こえるか？かすかな音だが、確かに誰かの気配を感じる…」
三人は息を潜め、周囲の音に集中した。その時、遠くから、悲鳴のような叫び声が聞こえてきた。ラーンの顔色が一変し、彼は剣を抜いた。「イシェ、後ろを固めて！」と叫びながら、遺跡へと飛び込んだ。イシェは一瞬躊躇したが、すぐにテルヘルと共にラーンを追いかける。
遺跡の中は暗く、湿った土の匂いが漂っていた。ラーンの先導で進むが、道中、謎の生物らしき影がちらつき、不気味な雰囲気に包まれていた。そしてついに、彼らは叫び声のする方へとたどり着いた。そこは、広々とした遺跡の中庭のような場所で、そこには、一人の女性が倒れ、傷ついた状態でうずくまっていた。
「母…！」
ラーンの声が震えていた。「あの女性は…」イシェは言葉を失った。倒れた女性は、ラーンを幼い頃から育ててきた、ビレーの村で尊敬を集める「母」のような存在だったのだ。