ビレーの薄暗い酒場「錆びた剣」のカウンター越しに、ラーンがイシェに愚痴をこぼしていた。
「またかよ、イシェ。あいつは一体何を探してるんだ?あの高額な報酬で遺跡探査なんて、普通の人間には考えられないよな。」
イシェは静かに酒を一口傾け、ラーンの視線を避けたまま言った。「テルヘルには何か理由があるのだろう。私たちが知る必要はない。」
ラーンは不機嫌にテーブルを叩いた。「でもさ、あの冷たい目つきと口の端から零れる言葉の一つ一つが、まるで俺たちを舐めてるみたいなんだよ!あいつには俺たちの夢も何も理解してない!」
イシェはため息をつき、「ラーン、また大穴の話か?あの遺跡探査で本当に大穴を見つける可能性なんて、ほとんどないって分かってるだろう?」
「でも、いつか必ず見つけるんだ!あいつに言わせた高額な報酬だって、俺たちに夢を与えるためのものだろ!」
ラーンの言葉にイシェは何も言わなかった。彼女はラーンの熱い情熱を理解していたが、同時に現実の厳しさも知っていた。ビレーでは貧しい者たちの間で「残飯」を求めて争う姿を見かけることが日常だった。
その日も、テルヘルは遺跡探索の指示を出した。今回は特に危険な場所だと言われ、ラーンの顔色は少し曇った。イシェはラーンの背中に手を当て、小さく頷いた。
「大丈夫よ、ラーン。私たちにはお互いがいる。」
三人は遺跡へと向かった。夕暮れの薄暗い森の中を進むにつれて、空気が重くのしかかっていた。ラーンの心の中で、テルヘルの冷酷な顔と、イシェの温かい手触りが交互に浮かんだ。