残り香

消えた香りの名残。

物語への影響例

過去の持続的存在。記憶の触媒。不在の存在感。喪失後の痕跡。

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ラーンが剣を抜き放つ音が、埃っぽい遺跡の空気を切り裂いた。巨大な石扉がゆっくりと開いていく。イシェは後ろから「待て!」と叫んだが、ラーンの熱意には敵わなかった。扉の向こう側は、予想以上に広かった。天井からぶら下がる鍾乳石が不規則な影を落とし、空気を冷たく澱ませていた。

「おおっ!これは大穴だ!」

ラーンの目は輝いていた。イシェはため息をつきながら、後ろを振り返ると、テルヘルが静かに扉の隙間から遺跡の様子を伺っていた。彼女の顔色は険しかった。

「何かあったのか?」

イシェが尋ねると、テルヘルはわずかに頷いた。

「この遺跡は、ヴォルダン軍が以前調査していた場所だ。残された資料によると、彼らはここで何らかの危険なものを発掘したらしい。」

ラーンの顔色が少し曇る。「そんな話、聞いたことないぞ!」

テルヘルは、イシェの目に止まった。「ヴォルダンは、遺跡の情報を隠蔽する傾向がある。彼らが何を恐れているのか、まだわからない。」

遺跡の中を進むにつれて、空気が重くなった。かすかな甘い香りが漂ってくる。イシェは不快に眉間に皺を寄せた。

「この香り…どこかで…」

ラーンが何かを発見したように立ち止まり、石畳の隙間から小さな瓶を取り出した。瓶には、半透明の液体が入っていた。

「これは…」

ラーンの声は震えていた。イシェも瓶に近づき、その内容物をじっと見つめた。瓶の蓋を開けると、甘い香りが一気に広がった。イシェは、その香りに懐かしい気持ちと同時に、深い恐怖を感じた。それは、かつて失った故郷の残り香だったのだ。

「これは…ヴォルダンが探していたものなのか…」

テルヘルが呟いた。イシェは、ラーンの顔色をじっと見つめた。彼の目は、興奮ではなく、深い悲しみに満ちていた。