「よし、今回はあの崩れかけた塔だ。噂では奥深くで、かつての王の墓があるらしい」ラーンが目を輝かせた。イシェは眉間にしわを寄せて地図を広げた。「王の墓か…だとしたら、ヴォルダンが探している可能性もある。危険すぎるぞ」。ラーンの興奮に水をかけようとしたその時、テルヘルが鋭い視線で彼らを制止した。「二人とも、今回は慎重に進もう。あの塔はかつて、大規模な戦いの跡地だ。多くの死者が眠っている。我々は墓荒らしではない」
ビレーを出発して数日後、彼らは崩れかけた塔の麓にたどり着いた。重厚な石造りの壁には、年月とともに風化し、まるで泣いているように見える奇妙な模様が刻まれていた。ラーンの足取りは軽いが、イシェは慎重に周囲を警戒した。
塔の中へ足を踏み入れると、薄暗い廊下の奥から不気味な冷気が漂ってきた。壁には、かつて激しい戦いの痕跡が残っていた。剣や矢が刺さったまま朽ち果て、床には無数の骨が散らばっていた。イシェは背筋を寒くするような感覚に襲われた。ラーンは剣を握りしめ、緊張した表情で周囲を見回した。「ここには何かいる…」。
彼らは塔の最上階まで進み、王の墓へと続く扉の前にたどり着いた。扉には複雑な模様が刻まれており、まるで生きているかのように脈打っているように見えた。テルヘルは扉に触れながら呟いた。「この扉を開けるには、ある種の犠牲が必要だ…」
ラーンの瞳に強い光が宿った。「犠牲か…なら俺がやる!」彼は剣を抜き、扉に向かって突進しようとしたその時、イシェが彼を制止した。「待て!なぜ犠牲にならなきゃいけないんだ?この塔には何か恐ろしい秘密があるのか…?」。
テルヘルは深遠な眼差しで二人を見つめた。「この塔は、死者の眠る場所だ。そして、我々は今、その眠りを冒涜しようとしている…」