ビレーの薄暗い酒場で、ラーンは豪快な笑い声を上げながら酒を傾けていた。イシェは眉間にしわを寄せ、彼の肩を軽く叩いて注意深く口を開く。「また遺跡の話か? 今日は特に危険な場所だったのに…」
ラーンの笑顔は少し曇り、「でもさ、あの奥深くに眠ってた古代の剣を見つけたんだぞ! まだ錆びついてたけど、磨けばきっと凄い値段になるはずだ」と目を輝かせた。イシェはため息をついた。「ラーン、そんな大金を得る夢を見るのはいいが、現実を見ろ。あの遺跡は危険すぎる。今回は運よく無事だっただけで…」
その時、扉が開き、テルヘルが静かに店に入ってきた。彼女の鋭い視線は二人を一瞬で捉えた。「準備はいいか? 次の遺跡へ向かう」と、彼女は硬質な声で告げた。ラーンの顔色が変わった。「え? もう行くんだ? 今日はもう十分…」
「時間がない」テルヘルは冷たく切り捨てた。「あの遺跡には、私が探しているものがある。そして、お前たちが必要だ」
イシェが不安そうに「何がいるんですか?」と尋ねると、テルヘルは少しだけ柔らかく言った。「それは…教えられない。ただ、あの遺跡には危険なものも眠っている。死神の影さえも潜む場所だ…」
ラーンの顔色がさらに青ざめた。彼は死神という言葉に本能的な恐怖を感じた。イシェは彼の腕を軽く握りしめ、静かに言った。「大丈夫、ラーン。一緒に乗り越える」
テルヘルは彼らの表情を見据え、「では、出発だ。」と宣言した。ビレーの夜空には冷たい風が吹き荒れ、三人は死神の影が忍び寄る遺跡へと向かう。