ラーンが巨大な石の扉に斧を振り下ろした。埃が舞う中、扉はゆっくりと開いていく。イシェは薄暗い奥へと続く通路を懐疑的な目で眺めた。「また空っぽか？」
「いや、今回は違うぞ！何か感じる」ラーンの目は輝いていた。テルヘルは静かに剣の柄を握りしめ、後ろから二人を見つめていた。
遺跡の内部は湿気を帯びた冷たい空気で満たされていた。壁には古びた壁画が描かれ、奇妙な文字が刻まれていた。「これは…ヴォルダンで使われていた言語だ」テルヘルが呟くと、ラーンの顔色が変わった。「ヴォルダン？」イシェは不安そうに言った。「なんでこんな場所に…」
「ここはヴォルダンの遺跡だったのかも知れない」テルヘルは冷酷に言った。「そして、この遺跡には何か危険なものが眠っている可能性が高い」
奥へと進むにつれ、空気が重くなっていった。やがて彼らは広間に出た。中央には巨大な石棺が置かれていた。棺の上には、奇妙な金属製の装置が取り付けられていた。
「これは…」ラーンの声は震えていた。「何か恐ろしいものを感じる…」イシェも背筋を寒気がするほど不気味な雰囲気を感じていた。
テルヘルはゆっくりと棺に近づき、装置に触れた。「これは…魂の抽出装置だ」彼女は言った。「ヴォルダンが死者を蘇らせるために使った技術だ」
その時、棺の蓋が開いた。中から黒い霧が立ち上り、部屋中に広がっていく。霧の中に、人の影が見えた。それは歪んでいて、不気味な形をしていた。
「逃げろ！」ラーンの叫び声が響き渡った。三人は必死に逃げ出したが、黒い霧は彼らを追いかけてきた。イシェは足を滑らせ転倒した。「イシェ！」ラーンが振り返ると、黒い霧がイシェに迫っていた。
ラーンは必死に剣を振り下ろしたが、霧は剣を通り抜けていった。そして、イシェの体を包み込んだ。
イシェは絶叫した。その声はすぐに沈黙し、霧の中に消えていった。
ラーンとテルヘルは立ち尽くしていた。イシェの姿は消え去り、残ったのは冷たい空気だけだった。
「お前も死んでしまえばいい」テルヘルの声に、ラーンの目は血走っていた。「ヴォルダンを倒すために、お前も犠牲になるのだ！」
ラーンは剣を握りしめ、震える手でテルヘルを見つめた。彼の心には、恐怖と憎しみが渦巻いていた。そして、イシェの死が彼をさらに深く闇へと引きずり込むことを知る由もなく…。