ビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑っていた。イシェは眉間に皺を寄せていた。「また大穴の話か？」と彼女はため息をつきながら、テーブルに置かれた粗末な地図を広げた。ラーンの指は、地図上に記された複数の遺跡のポイントを次々と指さしていく。「あの遺跡の奥深くには、きっと何かが眠ってるはずだ！俺たちはそれを掘り当てて、ビレーで一番大きな酒場を買おうぜ！」
イシェは地図を睨みながら、「そんな大穴なんて、一度も出てないぞ。それに、遺跡探検は危険だ。特に最近、ヴォルダンの兵士たちが辺境を探査しているという噂がある」と冷静に言った。ラーンはイシェの言葉に耳を傾けず、興奮した様子で言った。「でも、あの遺跡は昔、ヴォルダン軍が襲撃を受けた場所なんだって！もしかしたら、ヴォルダンが何か隠した秘密が残されているかもしれない！」
その瞬間、背後から冷たく低い声が響いた。「ヴォルダンが隠した秘密か…興味深い話だ」ラーンとイシェは振り返ると、テルヘルが立っていた。彼女の顔には不気味な笑みが浮かび、鋭い目は二人の間を縫うように動いていた。
「私は、そんな秘密を探し求めている者たちと手を組むことに興味がある」テルヘルはゆっくりと話し始めた。「もちろん、その代わりに、私が望むものを提供してもらわなければ…」
ラーンの脳裏には、ビレーで一番大きな酒場が浮かんだ。イシェはテルヘルの言葉に、何か歪んだものを感じ取っていた。しかし、ラーンはすでに、テルヘルの提案を受け入れることを決めていた。彼らの運命は、歪曲した欲望と秘密の遺跡へとつながっていくこととなる。