ラーンがいつものように大げさな動きで遺跡の入り口から飛び出すと、イシェはため息をついた。「またあの口調か。落ち着いて調査しろと言っただろう」。ラーンの背後からテルヘルが続くと、イシェはさらに小さくため息をついた。
「何だ、イシェ。いつもそんなに暗い顔をしているな」とラーンはにこやかに笑う。「今日はきっと大穴が見つかる気がするんだ！」
「大穴なんて…」イシェは呟きながら、周囲を警戒する。「そんな楽観的な態度で遺跡を探検するのは危険だ」。
テルヘルは静かに周囲を観察し、「この遺跡の構造は、かつてのヴォルダンの建築様式と酷似している。もし、ここに眠っている遺物にヴォルダンが関与していたならば…」彼女は言葉を濁す。「我々の目的を達成するための手がかりになるかもしれない」。
「目的？お前には何の目的があるんだ？」ラーンが首を傾げると、テルヘルは冷たく答える。「それはお前たちには関係ない。お前たちがやるべきことは、遺物を探し出すことだ」。
イシェはラーンの顔をじっと見つめた。「本当に大穴を見つけたいのか？それとも、ただ単に冒険が好きなのだろうか？」
ラーンの表情が一瞬曇る。「もちろん、大穴を見つけて富を得るのも夢だが…」彼は目をそらしながらつぶやいた。「でも、あの時、お前たちを助けた時のように、誰かの役に立つことも…」
イシェはラーンの言葉の意味を理解した。彼は単なる冒険好きではない。彼の心の中には、ある種の正統性のようなものがあるのだ。それは彼を危険な遺跡へと駆り立てる原動力であり、同時に彼を縛る鎖でもある。
テルヘルは彼らのやり取りを静かに見守り、自分の目的のために二人を利用しようと決意する。彼女の復讐心は、どんな犠牲も厭わないだろう。正統かどうかは、彼女には関係ない。