ビレーの夕暮れは早く、街を茜色に染め上げた。ラーンとイシェは今日も遺跡から戻り、テルヘルが用意した粗末な酒場で疲れを癒していた。
「今日の成果はイマイチだったなぁ」
ラーンがそう言うと、イシェは眉間にしわを寄せた。
「まあ、この遺跡はすでにかなり荒らされているらしいし、仕方ないんじゃないか」
「でもさ、あの歌を聞いた時、何かワクワクしたよね?まるで宝の地図みたいな…。」
ラーンは目を輝かせながら言った。イシェは彼の無邪気な熱意に苦笑する。
「その歌はただの民謡だよ。遺跡の場所を示すものではないだろう」
「そうかもしれないけど、何かのヒントになっているかもよ。あの歌には何か秘密が隠されているような気がするんだ!」
ラーンの言葉は熱情に満ちていた。イシェは彼の顔を見つめ、小さくため息をついた。
テルヘルがテーブルに酒を注ぎながら言った。
「その歌、ヴォルダンではよく耳にするものだと聞いたことがある。彼らの民謡には、隠された意味を持つものが多いらしい」
ラーンの瞳が輝きを増した。
「そうか!やっぱり何か秘密があるのか!」
イシェはテルヘルの言葉を聞きながら、複雑な心境になった。ヴォルダンと彼らの歌には、何か暗い秘密が潜んでいるような気がした。
その夜、イシェは眠れなかった。ラーンの言葉とテルヘルの警告が頭の中に渦巻いた。ヴォルダン、歌、そして遺跡の謎。彼女は胸騒ぎを覚え、深い闇に沈んでいくように感じた。