ビレーの喧騒を背に、ラーンはイシェの眉間に刻まれた皺を見つめていた。いつもならイシェの冷静さに安心するはずだが、今回は違った。遺跡探査への意欲が伺えるイシェの瞳には、どこか影が落とされているように見えたのだ。
「どうしたんだ、イシェ? 何か気になることでもあるのか?」
ラーンの問いかけに、イシェは小さく溜息をついた。「いや、特に...ただ、テルヘルからの依頼内容が大きすぎる気がする」と、彼女は呟いた。「あの遺跡の奥深くにあるという遺物は、一体どんなものなのか。本当に価値があるのか...」
「そんなこと気にすんなよ! どんな遺物でも大穴にはなるさ!」ラーンは豪快に笑ったが、イシェの不安は晴れる気配がない。テルヘルからの報酬額は確かに魅力的だったが、その代償として求められるリスクも大きかった。
テルヘルは、ヴォルダンへの復讐を果たすために、遺跡の奥底にある伝説の遺物を手に入れようと企んでいた。そのために、ラーンとイシェを雇い、危険な探索に挑ませようとしているのだ。
「大穴」という夢を追いかけるラーンの欲望は、イシェを巻き込むだけでなく、テルヘルの復讐心さえも加速させていく。三人は互いに異なる欲望を抱えながら、遺跡へと足を踏み入れることになる。その先に待つのは、栄光なのか、それとも破滅なのか...?