「よし、ここだ！」ラーンが、薄暗い遺跡の奥深くにある崩れた壁を指差した。イシェは眉間に皺を寄せて壁を確かめた。「本当にここに何かあるのか？ ラーン、また宝の地図で騙されたんじゃないだろうな？」
「騙されたなんて言わないでくれよ！今回は確信があるんだ。ほら、この壁に刻まれた紋様、どこかで見たことないか？」
イシェは懐から小さな石板を取り出して壁の紋様と照らし合わせてみた。「確かに… 以前、古い書物で似たような紋様が載っていた覚えがある。何か古代の儀式に使われたものだったような…」
その時、テルヘルが背後から声をかけた。「二人とも、無駄な時間を過ごしている。あの紋様は、遺跡の奥に眠る『欠片』を示す鍵だ。」
ラーンの顔色が明るくなった。「そうか！やっぱりあったのか、『欠片』！」彼は興奮気味に壁を叩き始めた。
「待て、ラーン！」イシェが彼の手を掴んだ。「あの『欠片』はヴォルダンが欲しがるものだとテルヘルが言っていた。危険だぞ。」
「わかってる！でも、あの『欠片』があれば…」ラーンの目は輝いていた。
テルヘルは冷酷な笑みを浮かべて言った。「私は、ヴォルダンから奪われたものを取り戻すためにここにいる。お前たちには、『欠片』を手に入れるための力を貸すつもりだ。」
イシェは不安を感じながらも、ラーンの熱意に押されるように、壁の奥へと進んでいった。彼らには、まだ想像もつかない危険が待ち受けていた。