ラーンがいつものように大口を開けて笑い声を上げると、イシェは眉間に皺を寄せた。「またそんなことを言うな、ラーン。あの遺跡は危険だと言っただろう。」
「大丈夫だ、イシェ。俺が先頭に立って行くから」ラーンは剣を片手に胸を張った。彼の目は輝いていて、まるで冒険話に飛び込む子供のように無邪気だった。
テルヘルは冷静な目で二人を見つめた。「危険は承知の上で、その遺跡へ入りますか？」と問いかけた。彼女の言葉には冷徹さが宿っていた。ラーンの無謀さは彼女を苛立たせるだけでなく、計画を狂わせる可能性もあった。
イシェはため息をついた。「ああ、もうしょうがないわね。でも、何かあったら責任取ってもらいますよ」とラーンに告げた。
遺跡の入り口には、崩れかけた石柱がそびえ立っていた。かつて栄華を極めた文明の痕跡が、今は朽ち果てた姿で残されている。一歩足を踏み入れると、不気味な静寂が彼らを包み込んだ。
「何かいる気がする…」イシェは小さく呟いた。彼女の直感は鋭く、いつも通りに危険を感じ取っていた。ラーンは耳を澄ませると、「聞こえたか？何か音がする」と答えた。
すると、奥から不気味な音色が響き渡った。それは金属がぶつかり合うような音で、どこか不自然なリズムを持っていた。
「何だあの音？」ラーンの顔色が変わった。彼は剣を握りしめ、警戒態勢に入った。イシェも静かに daggers を抜き取った。テルヘルは冷静に周囲を見回し、何かを探しているようだった。
その時、石柱の影から、奇妙な生き物が現れた。それは人型の姿をしているが、皮膚は硬く、金属のような光沢を帯びていた。その目は赤く光り、鋭い牙を剥き出しにしていた。
「これは…！」イシェの声が震えた。「ゴーレム！こんなところに…」
ラーンは驚いて立ち尽くした。ゴーレムとは古代文明の遺跡を守るために作られた自動兵器であった。強力な力を持つため、非常に危険な存在だった。
「まさかここにゴーレムが…なぜ？」テルヘルは冷静さを保ちながら言った。「これは偶然ではない。誰かが意図的にゴーレムを起動させたのだ。」
ラーンの顔に恐れの色が浮かんだ。彼は剣を構えてゴーレムに立ち向かったが、その攻撃はゴーレムの硬い皮膚を貫くことはできなかった。イシェも daggers で攻撃を試みたが、同様に効果はなかった。
「このままでは…」イシェの声が途切れた。彼らはゴーレムの前に無力だった。
その時、テルヘルが動き出した。彼女は素早くゴーレムの背後に回り込み、その弱点である後頭部を狙った。彼女の剣は正確にゴーレムの後頭部に命中し、ゴーレムは轟音を上げて崩れ落ちた。
「や、やった…」イシェは安堵のため息をついた。ラーンもまだ驚きを隠せない様子だった。テルヘルは冷静に言った。「この遺跡には何か秘密がある。そして、それはヴォルダンと関係している可能性が高い。」
彼女の言葉は重く響き渡り、彼らの運命を大きく変える予兆となった。