「よし、今回はあの崩れた塔だ。噂によると奥深くには未開の部屋があるらしい」ラーンが目を輝かせた。イシェは眉間に皺を寄せながら地図を広げた。「そんな話、初めて聞いたわよ。しかも、ヴォルダンとの国境に近い場所だし、危険すぎるんじゃない？」
「大丈夫大丈夫！俺が先導するから。それに、テルヘルさんが高額の日当を約束してくれたんだろ？大穴が見つかったら、ビレーの全員を連れて豪遊できるぞ！」ラーンの言葉にイシェはため息をついた。
「いつも通り、大穴だの宝だのと夢ばかり見てるわね。現実を見なさいよ。あの塔は危険すぎるし、ヴォルダンが監視している可能性もある」
その時、テルヘルが口を開いた。「イシェさんの言う通り、リスクは高い。しかし、そのリスクに見合うだけの報酬があるのも事実だ。あの塔にはヴォルダンが何かにつけて手を付けているという情報もある。もし、我々が先に貴重な遺物を見つけられたら…」
テルヘルの言葉にラーンとイシェは互いに視線を交わした。確かに、ヴォルダンとの国境に近いということは、危険なだけでなく、ヴォルダンにとって重要な場所である可能性が高いということでもあった。そこに眠る遺跡は、ヴォルダンへの復讐の鍵となるかもしれない。
「よし、わかった！あの塔に挑戦だ！」ラーンの決意が固まった時、イシェは静かに頷いた。そして、テルヘルは満足げに微笑んだ。三人は互いに異なる目的を抱えながら、橋渡しのような存在である遺跡へと向かい始めた。