「よし、今回はあの洞窟だ。地図によると奥の方に何かがあるらしい」ラーンが目を輝かせて地図を広げる。イシェは眉間に皺を寄せながら地図を確認した。「また、そんな危険な場所？ ラーン、あの洞窟は魔物が出ると噂されてるぞ。それに、あの遺跡の調査許可は下りてないじゃないか。捕まえられるぞ」
「大丈夫だ、イシェ。テルヘルが許可証を用意してくれるだろ？」ラーンの言葉にイシェはため息をついた。テルヘルは確かに影の交渉術で何でも手に入れると言っていたが、その裏側には何かあるはずだと不安を感じていた。
洞窟の入り口には、崩れた石碑がそびえ立っている。「ここはかつてヴォルダン帝国の遺跡だったらしい」テルヘルが言った。「この遺跡にはヴォルダンが隠した宝物が眠っていると噂されている。もし見つけられたら、我々の復讐も早まるだろう」
ラーンの目はさらに輝きを増した。「よし！ 探索だ！」ラーンは剣を構え、洞窟に飛び込んだ。イシェはテルヘルに疑いの目を向ける。「本当に宝物が手に入るのか？ もしかして…」
「心配するな、イシェ。私は必ず復讐を果たす」テルヘルは冷たい笑みを浮かべた。「そして、この遺跡からは、ヴォルダンが隠したもう一つの財宝も手に入れるつもりだ」
洞窟の奥深くでラーンとイシェは古代の遺物を発見し、興奮を隠せない。しかし、その遺物には奇妙な記号が刻まれており、イシェは不吉な予感を抱いた。「これは…何か変だ」
その時、テルヘルは突然、ラーンの後ろに回り込み、彼の首筋に刃を突きつけた。「残念だけど、君たちはもう用済みだ」
「テルヘル、何をするんだ！？」ラーンの顔色は蒼白になった。イシェも驚きのあまり言葉を失った。
テルヘルは冷たい目で言った。「私はこの遺跡の真の目的を手に入れる。そして、そのために君たちを利用したのだ」彼女はラーンから奪った遺物を手にし、にやりと笑った。「ヴォルダンが隠していたのは、単なる宝ではなかった。それは…」
イシェはテルヘルの言葉の意味を理解し、恐怖で体が震えた。「横領…彼女は最初から私たちを利用して、ヴォルダンの財宝を横領しようとしていたんだ…」