ビレーの喧騒を背に、ラーンは重い足取りで遺跡へと続く道を歩いていた。イシェが彼を追い越して軽快なステップで進むのが見える。いつもならイシェの後ろを歩くラーンの姿は、まるで巨大な影のように見えたものだが、今日は somehow 重い足取りが抜けなかった。
「どうしたんだ、ラーン?いつものように元気ないぞ」
イシェは振り返り、心配そうに問いかけた。ラーンの顔色を見て、何かあったことを察したようだ。
「ああ、実はな…」
ラーンは言葉を濁しながら、視線を地面に向け続けた。昨日、テルヘルからもらった報酬を握りしめている自分の手のひらを意識する。いつもなら嬉しそうに受け取って、酒を奢ってもらったり、イシェと新しい装備を買ったりするはずだった。だが、今日はそれができない。
「あの遺跡で…何か見つけたんだ」
ラーンはようやく口を開いた。
「見つけた?」
イシェの眉が上がった。
「ああ、古い石碑だった。テルヘルが見つけた遺物の一つに、その石碑と関連する記述があったみたいだ」
ラーンは言葉をゆっくりと紡ぎ出す。「その石碑には、ヴォルダンに関する記述があるらしい…そして、テルヘルの復讐の鍵になるかもしれない」
イシェは一瞬、目を丸くした。その後、少しの間沈黙が続いた。ラーンの表情を見て、何かを察したようだった。
「つまり…?」
イシェは静かに問いかけた。
ラーンは深くため息をつきながら言った。
「テルヘルは、この遺跡探索の目的を隠しているんじゃないか…」