ビレーの朝の光が差し込むと、ラーンはいつものようにイシェを起こし始めた。「おい、起きてよ、眠り姫!今日はテルヘルが待ってるぞ!」イシェはあくびしながら起き上がり、小さくため息をついた。「また遺跡か...。いつになったら大穴が見つかるんだろうね。」
「見つかるさ、必ず!ほら、今日の目標はあの『奏鳴の塔』だぞ!きっと何か面白い遺物があるはずだ!」ラーンの目は輝いていた。イシェはラーンの熱意に苦笑しながらも、準備を始めた。
テルヘルは、いつも通りビレーの外れにある宿屋の一室で待っていた。彼女はテーブルの上を広げ、地図を広げて遺跡の構造を分析していた。「今日は『奏鳴の塔』か...。」彼女は呟きながら、小さな銀色の笛を手に取った。それは、かつてヴォルダンに奪われた愛する人の遺品だった。
ラーンとイシェが到着すると、テルヘルは冷静に指示を出した。「遺跡内部には罠が仕掛けられている可能性が高い。特に奏鳴の塔は、かつて音楽で制御されていたらしい。気をつけろ。」
3人は遺跡へと足を踏み入れた。静寂の中、かすかに楽器の音色が聞こえてくるようだった。イシェは不気味な感覚に襲われたが、ラーンは全く気にせず進んでいった。彼らは、古代文明の遺物や謎の記号が刻まれた壁画などを見ながら、塔の奥深くへと進んだ。
ついに最上階に到着すると、そこには巨大なオルガンが鎮座していた。その音色は、まるで失われた時代の記憶を呼び起こすかのようだった。ラーンは目を輝かせ、「これは大穴だ!」と叫んだ。しかし、その時、床から突如として矢が飛び出した!イシェは咄嗟にラーンをかばうように身を躍らせた。
「気をつけろ!」テルヘルが叫び、銀の笛を吹き鳴らすと、その音色が遺跡中に響き渡った。すると、矢は全て静止した。テルヘルは冷静に、「奏鳴の塔は音楽で制御されているのだ。この笛の音色で罠を解除できる。」と説明した。
イシェはラーンの無事を確認しながら、テルヘルの笛の音色に耳を傾けた。その音色は、どこか切なく美しく、失われた故郷を偲ばせるようなものだった。イシェは、テルヘルがヴォルダンへの復讐心だけでなく、愛する人を失った悲しみも抱えていることに気付き、胸が締め付けられる思いをした。
ラーンは、オルガンに手を伸ばし、「よし、大穴だ!」と叫びながら鍵盤を叩き始めた。しかし、その瞬間、壁から巨大な影が現れ、ラーンを襲い掛かった!