ビレーの朝は薄霧に包まれていた。ラーンがいつものように寝坊してイシェを起こすのも、日差しが屋根に届く頃だった。今日はテルヘルからの依頼で、街から南へ3日の道のりを隔てた遺跡に向かう予定だ。
「またあの遺跡か。」イシェは顔をしかめた。「あれは危険だって聞いたことがあるよ。」
「大丈夫だよ、イシェ。テルヘルが言うには、今回は大物らしいぞ！きっと何か面白いものが見つかるさ」ラーンは目を輝かせた。彼の目はいつも夢見ている未来を映し出していた。
テルヘルはビレーの宿屋で彼らを待っていた。彼女の鋭い眼光は、いつも通り冷ややかだった。「準備はいいか？」
「いつでも行くよ！」ラーンの声は張り裂けそうなほど高かった。イシェは小さく頷き、テルヘルに視線を合わせた。彼女は少しだけ微笑んだ。
遺跡への道は険しかった。深い森を抜け、崩れかけた石畳の道を進むにつれて、空気が重く、静かになった。イシェは背筋が寒くなるような予感がした。
遺跡の入り口には奇妙な模様が刻まれた巨大な石門があった。ラーンが石門に触れた瞬間、激しい光が爆発し、世界が一瞬で白銀に染まった。そして、視界が戻ると、そこはまるで別の世界だった。
目の前には広大な洞窟が広がり、その天井からは無数の宝石が輝きを放っていた。それはまるで、極彩の宝石で埋め尽くされた夜空のようだった。ラーンは息を呑んだ。イシェも言葉を失った。
「これは…」テルヘルは目を丸くした。彼女の表情には驚きと狂喜が入り混じっていた。「ここに、伝説の『極彩の宝』があるのかもしれない…」