ビレーの夜空には鮮やかな緑の極光が揺らめいていた。ラーンが酒を煽りながら星空を見上げると、イシェは眉間にしわを寄せた。
「またあの話か？」
「いや、違うんだ。俺、あの極光見て思ったんだけどな」ラーンは目を輝かせた。「この街、ビレーってのは、遺跡だらけで、なんか特別な場所じゃないかと思わないか？もしかしたら、この極光が何かを示してるんじゃないか？」
イシェはため息をついた。「ラーン、また空想話かい？あの極光はただの自然現象だ。遺跡探しのヒントになるわけがない」
「いや、でもさ…」ラーンは言葉を詰まらせ、テーブルに置かれたテルヘルの地図を指差した。「この地図の記号、よく見たら極光の軌跡に似てないか？」
テルヘルは眉をひそめた。「そんなわけない。あの記号は遺跡の位置を示すものだ。極光と何の関係もない」
「でも…」ラーンの目はまだ輝いていた。「もし、本当だったら？もしかしたら、この極光が遺跡の場所を教えてくれてるんじゃないのか？」
イシェは諦めたように肩を落とした。ラーンはいつもこうだった。突拍子もない考えに飛びつき、現実を見ようともしない。しかし、彼の熱意にはどこか惹かれるものがあった。
テルヘルは地図を手に取り、極光と記号をじっと見つめた。彼女の目的はヴォルダンへの復讐だった。遺跡探しがその目標達成に役立つことは間違いない。しかし、ラーンの言葉がかすかに心に引っかかった。
「よし、わかった」テルヘルは言った。「次の探索は、極光の軌跡に合わせて行ってみよう」