ビレーの朝焼けが、ラーンの粗雑な寝起きを告げた。イシェはすでに朝食の準備を終えていた。「今日はあの『棘の遺跡』に挑戦だぞ」ラーンが目を擦りながら言った。イシェはため息をつきながら、「また大穴に目がくらんでいるのか」と呟いた。
「違うんだって!今回はテルヘルが言うには、あの遺跡に眠る遺物はヴォルダンに奪われたものらしいんだ!」ラーンの目は輝いていた。「あの『棘の王冠』だぞ!奪い返せば、ヴォルダンへの復讐も夢じゃない」
イシェは、ラーンの熱意に押されながらも、どこか不安を感じていた。テルヘルが言うには、『棘の遺跡』は非常に危険な場所だった。過去の探検隊は全員戻らなかったという話もあった。「なぜテルヘルがそんなリスクを冒すのか…」イシェは疑問を抱きつつも、ラーンとテルヘルの前に立つことを決意した。
遺跡への道は険しく、鋭い岩が道の至るところに突き出ていた。まるで巨大な獣の棘のように、探検者を威嚇しているかのようだった。テルヘルは先頭を歩き、地図を片手に慎重に進む。ラーンは後ろからイシェを引っ張るようにして進んでいた。「早く大穴を見つけたい」と、彼は不機嫌そうに言った。
遺跡の入り口に着くと、そこには巨大な石扉が立ちはだかっていた。扉には複雑な模様が刻まれており、まるで生きているかのようだ。テルヘルは慎重に扉に触れた。「これは…!」彼女は目を丸くした。扉にはヴォルダンの紋章が刻まれていたのだ。
「ヴォルダンが遺跡を占領しているのか…」イシェは不安を感じた。「では、なぜテルヘルはこの遺跡に来たのか?」
その時、背後から不気味な音が聞こえた。振り返ると、影のような存在たちが彼らを取り囲んでいた。鋭い棘が生えた巨大な生物たちだ。それはヴォルダンの兵士だった。
ラーンは剣を抜き、イシェも短剣を構えた。「やれやれ…ついに来たか」テルヘルは冷たい微笑みを浮かべた。彼女は背中に隠した杖を取り出した。「準備はいいか?この棘の道で、我々は真実に辿り着けるだろう」