ビレーの tavern の薄暗い奥のテーブル席にラーンとイシェが座っていた。目の前には、テルヘルが用意した粗末な地図が広げられていた。
「今回はここだ。ヴォルダンと接する山脈にある遺跡だと聞いた。」テルヘルは地図を指さしながら言った。「古い記録によると、そこにはヴォルダン王室の栄華を象徴する宝物が眠っているらしい。」
ラーンの顔から興奮が溢れ出した。「おーっ！ついに大穴が見つかるか！」イシェは眉間にしわを寄せた。「何の情報も無い遺跡に飛び込むのは危険すぎるんじゃないか？」
「大丈夫だ。情報収集は私の仕事だ」テルヘルは自信たっぷりに言った。「それに、君たちには報酬を払うからな。」ラーンの目は輝き、イシェの抵抗も薄れた。
遺跡の入り口は崩れかけており、朽ちた石造りの門がひっそりと佇んでいた。かつて栄華を誇った文明の痕跡だけがそこに残されていた。
「ここが本当にヴォルダン王室の遺跡なのか？」イシェは不安げに言った。「何百年も放置されていれば、宝など残っていないんじゃないか？」
「そんなことない」ラーンは剣を構えながら言った。「大穴を見つけた暁には、ビレーのみんなに酒を奢るぞ！」
テルヘルは地図を広げて慎重に道を確認した。遺跡内部は複雑な迷宮となっており、壁には古びた絵画が描かれていた。かつての栄華を物語る壮麗な様子だったが、今は埃まみれで色褪せていた。
「ここだ」テルヘルは壁に手を当てた。「この絵画の奥にある部屋に宝物が隠されているはずだ。」
イシェは緊張した表情で周りを見回した。静寂の中、かすかな音が聞こえてきた。それは足音だった。
ラーンが剣を抜き、イシェとテルヘルは警戒しながら影から現れた敵に立ち向かった。ヴォルダンからの刺客だった。激しい戦いが繰り広げられる中、ラーンの剣が敵の胸を貫いた。
「これで終わりだ！」ラーンが叫んだ。しかし、その瞬間、床が崩れ、三人は深い穴に落ちてしまった。
気がつくと、彼らは広大な地下室にいた。天井から光が差し込み、中央には巨大な宝箱が置かれていた。
「これは…」イシェは目を丸くした。宝箱を開けると、そこには宝石や金貨、そして一枚の古い巻物が入っていた。
巻物にはヴォルダン王室の栄華を物語る歴史が記されていた。それは、かつて栄えた王国の繁栄と衰退、そして失われた宝の秘密。
「大穴…」ラーンは呟いた。だが、彼の心には複雑な感情が渦巻いていた。宝物を手に入れた喜びと、同時に、この栄華の影に隠された深い悲しみに触れたような気がしたのだ。