ビレーの朝焼けは、まだ雲の上に隠れていた太陽の光を柔らかく濾し、街全体を薄いピンク色に染めていた。ラーンがいつものように寝坊したため、イシェは一人で朝食の準備をしていた。粗末なパンと野菜スープだが、イシェの手にかかればどこかほっとする優しい味になる。
「今日はどこへ行くんだい?」
イシェの問いかけに、ラーンはあくびをしながらテーブルについた。「テルヘルが新しい遺跡の情報を入手したらしいぞ。ヴォルダンとの国境近くにあるって。危険な場所だって言うけど、報酬も高いらしい」
イシェは眉間にしわを寄せた。「また危険な場所か… ラーン、もう少し堅実な仕事を探すべきじゃないのか?」
ラーンの顔はいつものように明るく、「大穴」を見つけるまでは冒険は止められないと言わんばかりだった。イシェはため息をつきながら、スープを飲み始めた。
テルヘルは、いつもより早くビレーに到着していた。黒曜石のような瞳にどこか冷たい光が宿り、口元には薄暗い微笑みが浮かんでいた。「今日こそ、ヴォルダンに復讐の第一歩を踏み入れる時が来た」と、彼女は静かに言った。ラーンとイシェの顔を見据え、「その遺跡には、ヴォルダンが恐れるものがある。それを手に入れれば、全てが変わる」
遺跡への道は険しく、冷たい風が吹き荒れていた。しかし、ラーンの無鉄砲さとイシェの冷静な判断で、彼らは無事に遺跡へとたどり着いた。遺跡内部は薄暗く湿気を帯びており、壁には不思議な模様が刻まれていた。
「ここからは気をつけろ」テルヘルは低い声で言った。彼女の目は鋭く周囲を警戒していた。遺跡の奥深くまで進むにつれて、空気中に漂う奇妙なエネルギーを感じ取ることができた。
やがて彼らは、中央に巨大な石棺が安置されている部屋に到着した。石棺の上には、まるで生き物のように柔らかく輝く青い光が漂っていた。「これがヴォルダンが恐れるものか…」テルヘルは呟いた。彼女はゆっくりと石棺に手を伸ばし、蓋を開けようとした。その時、突然、石棺から強烈な光が放たれ、部屋全体を白く包んだ。
目を覚ますと、ラーンはイシェの腕の中に抱かれていた。周りを見回すと、遺跡は崩壊しており、テルヘルの姿はどこにもなかった。「テルヘルはどこにいるんだ?」ラーンの声に、イシェは苦い顔をした。「わからない… でも、きっと生きているはずだ」
二人は rubble の山を登り、崩れた遺跡から脱出した。夕暮れの柔らかな光が、荒れ果てた遺跡の風景を照らしていた。ラーンはイシェの肩に寄りかかり、沈黙した。彼らは、テルヘルとの約束を果たすために、再び遺跡に立ち向かう決意をした。
そして、彼らの冒険は続く。