ビレーの朝 sebelum fajrはいつもと変わらず静かで冷たかった。ラーンの粗雑な寝息が、薄暗い部屋に響き渡っていた。イシェはすでに起きていて、小さなランプの光を頼りに荷造りをしていた。
「今日はあの遺跡だな」
イシェが呟くと、ラーンはあくびをしながら起き上がった。「ああ、あの巨大な石碑があるやつか。テルヘルが言ってたな。何か重要な遺物があるらしいって」
「重要かどうかはともかく、危険なのは確かだ」
イシェの言葉にラーンの顔色が少し曇った。
テルヘルから依頼を受けた遺跡は、ビレーから半日の距離にある。かつて栄えた文明の痕跡が残る場所だが、その地下には未知なる危険が潜んでいると伝えられていた。
「大丈夫だ。俺たちが一緒ならなんとかなるさ」
ラーンの強そうな言葉に、イシェはわずかに微笑んだ。二人は荷物を背負い、ビレーの街を後にした。
日差しが容赦なく照りつける中、二人は長い道のりを歩いた。遺跡へと続く山道は険しく、足元には鋭利な岩が転がっていた。ラーンの腕力とイシェの俊敏さがあればなんとか進めるものの、疲労は蓄積していくばかりだった。
夕暮れ時、二人はようやく遺跡へと続く入り口にたどり着いた。巨大な石碑がそびえ立ち、その表面には複雑な模様が刻まれていた。
「ここがテルヘルの言う場所か」
イシェが呟くと、ラーンは頷いた。「よし、準備だ!」
二人は石碑の周りを見回し、周囲の状況を確認した。すると、イシェが不吉な表情を浮かべた。
「ラーン、あの染み…何か変だ」
イシェ指さす方向には、石碑の表面に赤い染みが広がっていた。まるで血のように濃く、ゆっくりと石碑へと染み込んでいくように見えた。
ラーンの顔色がさらに曇り始めた。「まさか…」
その時、地鳴りが響き渡った。石碑の周囲から黒い影が湧き上がり、二人は背後から襲いかかってきた。