ラーンが巨大な石扉を押し開けた瞬間、埃の雲が立ち上った。イシェは咳き込みながら懐中電灯を点け、薄暗い遺跡内部を照らした。「また空っぽか…」イシェの言葉にラーンは肩を落とした。
「今回は違うって思ったんだけどな…。あの地図、本物だったはずなのに…」
テルヘルは石扉の前に立って静かに周囲を見渡していた。「地図には記されていなかった部屋がある可能性もある。慎重に探る必要がある」
イシェはため息をついた。「もう日が暮れるぞ。今日はここまでにして明日にしよう」
ラーンの顔色が変わった。「いや、まだちょっと…」
「ラーン！」イシェが制止しようとしたその時、地面から不規則な音がした。まるで何かに押さえつけられているかのような、かすかな呻き声だった。
「あれは…？」テルヘルが眉をひそめた。三人は音のする方向へゆっくりと進んでいった。壁際に沿って進むと、石畳の一角に小さな穴が開いていた。穴から漏れ出す薄暗い光に目を凝らすと、そこには奇妙な装置が置かれていた。複雑に絡み合った金属製の管や歯車が、まるで心臓のように脈打っているようだった。
「これは…」テルヘルが装置の表面に触れた瞬間、装置は突然動き始めた。金属パーツが高速で回転し始め、部屋中に不気味な音が響き渡った。同時に、装置から強い光が放たれ、三人は目を細めた。
光が消えた後、イシェが震える声で言った。「あの光…何か変わった気がする」
ラーンの視線が石扉に向けられた。扉の表面に刻まれた模様が、まるで生きているかのように輝き、ゆっくりと変化していることに気づいた。
「これは…」ラーンは言葉を失った。彼の目は、かつて地図で見つけた「枯渇した井戸」の絵柄と重ね合わさっていく。