ビレーの夕暮れは、いつもより早く訪れたように感じた。ラーンがイシェに肩を叩き、「今日はここでおしまいだな」と告げた時、空には既に薄暗い影が伸びていた。日中の暑さが嘘のように冷え込む風は、枯れ草の香りと共に吹き荒れていた。
「もう、日が暮れる前に戻らないと、あの道は危険だぞ」イシェはいつも通り冷静に言った。ラーンの豪快な笑いは、イシェの言葉で少しだけ収まった。「そうだな、今日はいい感じに稼げたし、これで酒でも飲むか！」
二人は、遺跡から持ち帰った小さな宝石をカゴにしまい込んだ。今日は特に収穫が少なかった。いつもならラーンは不満を漏らすところだが、今日はなぜか無言だった。イシェが彼を見つめると、ラーンの顔色が悪いことに気づいた。「どうしたの、ラーン？」
「いや、別に…」ラーンは言葉を濁すように言った。「ただ、最近何か変だなって…」
イシェはラーンの様子を心配そうに butted. いつもならすぐに打ち明けるラーンが、今日はどこか沈黙している。イシェは、ラーンの視線が遺跡の奥深くに向いていることに気づいた。そこには、深い影が伸びており、まるで何かが枯れ果てていくように見える。
「あの遺跡…、また行ってみないか？」ラーンの声がかすれていた。イシェは、彼の声に潜む不吉な予感を感じた。
「ラーン、何かあったのか？」イシェは尋ねた。「あの遺跡には危険が…」
「大丈夫だ、イシェ。俺はまだ諦めていないんだ」ラーンの目は、枯れ木のように固く輝いていた。「いつか必ず、大穴を掘り当ててみせる」。彼はそう言い残し、影に覆われた遺跡へと進んでいった。イシェは、ラーンの背中に手を伸ばそうとしたが、もう彼は遠くに行ってしまっていた。
イシェは、夕暮れの冷風に吹かれながら、ラーンの後ろ姿を見送った。彼の心に、不安と不吉な予感が広がっていった。