ビレーの朝焼けは、いつもより少し紅く染まっていた。ラーンが目を覚ますと、イシェはすでに準備をしていた。今日の遺跡は、町から東へ三日の道のりにあるという、かつて「炎の塔」と呼ばれた場所だ。
「今日はいい仕事になる予感だな！」
ラーンはいつものように豪語するが、イシェは眉間にしわを寄せた。
「情報源は怪しいし、ヴォルダンとの国境に近いんだ。何かあったら逃げ場がないぞ。」
「大丈夫だよ、イシェ。テルヘルが言うには、あの遺跡には古代の地図が眠っているらしいぞ。それが手に入れば、大穴も見つかるかもしれない！」
ラーンの言葉に誘われるように、イシェも重い腰を上げた。テルヘルは既に馬車に乗り込んでおり、不機嫌そうに時間を計っていた。
「遅刻するなよ。」
テルヘルの冷たい視線を感じながら、二人は馬車に飛び乗った。東へ向かう道は険しく、日差しは容赦なく照りつける。ラーンの明るい声でさえ、イシェの不安を消すには至らなかった。
遺跡に到着したのは夕方だった。炎の塔は、かつての栄華を留めることなく、朽ち果てた石柱が空に向かって伸びるのみだった。
「ここが本当に地図がある場所なのか…」
イシェの疑いの言葉に、ラーンは不敵な笑みを浮かべた。
「心配するな、イシェ。テルヘルは本物だ。」
テルヘルは遺跡内部を熟知したかのように、迷路のような通路を進んでいく。二人は後ろからついて行くしかなかった。
日が暮れ始めると、ついに奥深くで、巨大な石板を発見した。そこには、複雑な模様が刻まれていた。
「これが地図か…」
イシェは息を呑んだ。しかし、その瞬間、遺跡の奥底から不気味な音が響き渡った。影が動き、何者かが姿を現す。それは、ヴォルダンの兵士だった。
「ここはヴォルダン領土だ！侵入者は殺す！」
剣を抜く兵士たち。ラーンは剣を構え、イシェは必死に石板を隠した。テルヘルは冷静に状況を分析し、次の手を考えているようだった。
東から来た一行は、西の勢力と対峙することになった。彼らの運命は、まだ始まったばかりだった。