ラーンの大振りを制止するようにイシェが手を伸ばした。「待てよ、ラーン。あの石碑には何か刻まれているぞ」。
ラーンの足は既に遺跡の奥深くへ踏み入れていた。「どうせまた古代語だ。イシェ、お前が解読できるわけないだろう?」
イシェは眉をひそめた。「確かに難しいが…もしかしたら、この記号群は…」彼女は石碑に刻まれた複雑な模様を指さした。「以前見た、ヴォルダンの侵攻記録にある紋章に似ているぞ」。
ラーンが不快な表情をした。「ヴォルダン?またあの大国か?俺たちには関係ない話だ」。
イシェはため息をついた。「そうかもしれない。でも、もしこの遺跡がヴォルダンと関連していたら…」
その時、背後から冷たく響く声がした。「興味深い発見ですね」。
振り返ると、テルヘルが立っていた。彼女は薄暗い遺跡の奥深くを見つめ、「ヴォルダンとの条約にまつわる遺跡だとすれば、価値ある情報かもしれませんね」と呟いた。ラーンの不機嫌そうな顔とは対照的に、イシェは彼女の言葉にわずかに興味を示した。
「条約?」ラーンが眉間に皺を寄せた。「何のことだ?そんなの聞いたこともないぞ」。
テルヘルは少し笑った。「この遺跡がヴォルダンとエンノル連合との条約締結場所だった可能性があります。もしそうなら、その内容は非常に貴重な情報となるでしょう」
イシェはテルヘルの言葉に深く考え込んだ。「条約…つまり、ヴォルダンとエンノルの関係を左右するような内容だったのかもしれない」。
ラーンの顔は曇った。「そんなもの、俺たちに関係あるか?俺たちはただ宝探しをするだけだ」。
イシェはラーンを見つめ、「でも、もしこの遺跡が本当に重要な場所なら…」。
彼女の言葉は途絶えた。3人は互いに視線を交わし、遺跡の奥へと続く暗い通路をじっと見つめていた。