ビレーの朝はいつも早かった。薄暗い空が徐々に明るさを増す中、ラーンとイシェはすでに準備を終えていた。今日も遺跡だ。見慣れた風景ながら、ラーンの胸は高鳴っていた。いつか大穴を掘り当てて、この貧乏くさい街を抜け出すんだ、と彼は自分に言い聞かせるようにしていた。
イシェはいつも通り眉間にしわを寄せていた。「また無茶なことを考えているのか？」と彼女は冷めた口調で言った。「あの遺跡は危険だって何度も言ったじゃないか。特に今は…」
ラーンの耳には彼女の言葉は届いていなかった。彼の目は、遠くの山脈にそびえる朽ち果てた塔に向いていた。そこには古代文明の遺物があると噂されていた。そして、彼にとって、それは希望の光だった。
「よし、イシェ！今日は俺たちがその塔を制覇するぞ！」
ラーンの熱意に押されるように、イシェはため息をついた。「わかった、わかった。でも、無理はしないでね」
その時、背後から声がした。「準備はいいか？今日は少し特殊な依頼だ」
それはテルヘルだった。彼女の鋭い視線はラーンとイシェを貫いていた。彼女はヴォルダンからの復讐に燃える炎のような女だった。その瞳には、朽ち果てた過去と燃え盛る未来が交錯していた。
「今回は報酬も少し増やしたぞ。リスクが高いからな」テルヘルは冷たい笑みを浮かべた。「あの塔には、ヴォルダンが欲しがるものがあるらしい。お前たちはそれを手に入れる手伝いをするんだ」
ラーンの心は高鳴った。大穴ではなく、ヴォルダンを倒すための鍵…彼の冒険に新たな意味が与えられた気がした。イシェは少し不安げだったが、ラーンの熱意に押され、渋々頷いた。三人は、朽ち果てた塔へと向かった。その先には、彼らの運命を変えるものがあった。