「よし、今日はあの崩れた塔だ！」ラーンの顔は興奮で輝いていた。イシェは眉間にしわを寄せた。「また遺跡か？ ラーン、あの塔は危険だって聞いたことがあるぞ。罠だらけだって噂だし」
「大丈夫大丈夫！俺が先頭に立って開拓するから安心しろ！きっと大物が見つかるはずだ！」ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。彼の楽観的な態度には、いつも呆れ果てたものだった。
テルヘルは鋭い目で二人を見据えた。「準備はいいか？あの塔には貴重な遺物があるという情報を得ている。だが、危険も伴うことを覚悟しておけ」彼女の言葉にラーンとイシェは相視し合った。
塔の入り口は崩れ落ち、内部は暗闇に包まれていた。一歩足を踏み入れると、ひんやりとした空気が肌を刺す。ラーンの足音だけが、静寂の中で響き渡る。「ここは一体…」イシェが呟くと、突然床が崩れ始め、ラーンが下に落ちていった。「ラーン！」イシェの声は塔内にこだました。
テルヘルは冷静に状況を判断した。彼女は懐からロープを取り出し、イシェに向かって「行くぞ！彼の助けになるのは我々だけだ」と告げた。
深い闇の中、ラーンは痛みにうめき声を上げていた。彼は運良く大きな岩に挟まれずに済んだが、足が動かない。その時、上の方から光が差し込んだ。「イシェか…？」彼の声はかすれていた。
イシェとテルヘルは協力して、ラーンを安全な場所へと運び出した。怪我は軽かったものの、ラーンの顔には落胆の色が浮かんでいた。「大穴が見つかると思ったのに…」彼の言葉に、イシェは優しく微笑んだ。「大穴はいつか見つかるさ。今は生きていることが一番大切だ」
テルヘルはラーンの様子をじっと見ていた。彼女の心には、復讐よりも、この二人の友情に何かを感じ始めていた。それは、彼女が隠してきた本心の奥底から湧き上がる感情だったのかもしれない。