ビレーの tavern の喧騒が、ラーンの耳を撫でるように過ぎ去った。イシェがいつものように眉間に皺を寄せていた。
「本当にこれでいいんだろ?」とイシェは、テルヘルの提示した地図を指さした。「ヴォルダンとの国境近くにある遺跡なんて、危険すぎるぞ」。
ラーンの視線は、テルヘルがテーブルに置いた小袋に釘付けになった。そこには、彼らが今まで見たことのないほどの金貨が入っていた。
「大丈夫だ、イシェ」とラーンは豪快に笑った。「俺たちが今まで探した遺跡なんて、ただの子供のおもちゃだったんだぞ!テルヘルが言うように、今回は大穴を掘り当てられる気がする」。
テルヘルは薄暗い tavern の奥の席から鋭い視線を向けていた。その目はまるで、ラーンの魂を覗き込んでいるようだった。「この遺跡には、ヴォルダンが隠した秘密がある。そして、それを暴く鍵となるのが、お前たちの持つ力だ」。
イシェは、ラーンの言葉に反論しようとした。しかし、彼の瞳には、かつて見たことのない決意の光が宿っていた。テルヘルの言葉に心を揺さぶられたのかもしれない。
彼らは翌朝、ビレーを後にした。広大な平原を横切る道は、ヴォルダンとの国境に近づくにつれて険しくなっていった。空には不吉な黒い雲が渦巻いており、まるで彼らの行く末を予言しているかのようだった。
遺跡は山腹に切り立った崖の中に隠されていた。崩れかけた石造りの門だけが、かつて栄華を誇っていたことを物語っていた。
「ここだ」とテルヘルは言った。「この遺跡には、ヴォルダンが滅ぼした古代文明の末裔が残した秘密が眠っている」。
イシェは不安げに、ラーンの腕に手を置いた。「本当に大丈夫なのか?」と尋ねた。
ラーンはイシェの手を握りしめ、力強く頷いた。「大丈夫だ、イシェ。俺たちには、必ず道が開ける」。
彼らは遺跡の奥深くへと進んでいった。彼らの前に広がるのは、忘れられた歴史の闇だった。そして、そこには、ヴォルダンの影が深く潜んでいた。