冷たい木枯らしがビレーの街を吹き抜けた。ラーンは肩をすくめながら、イシェとテルヘルに向かって「今日はいい天気だな!」と声を張り上げた。イシェは眉間にしわを寄せて、「そんな風に言っても仕方がないでしょう。遺跡に潜るにはあまりにも寒い」と呟いた。
テルヘルは両手をポケットに突っ込み、視線を遠くのヴォルダン国境に向けた。「寒いのは気にしない。重要なのは、あの遺跡に眠る遺物だ」と静かに言った。その言葉にラーンは目を輝かせ、「そうだな!今日は必ず大穴を見つけるぞ!」と叫んだ。
3人は廃墟となった城塞跡へと向かった。木枯らしが吹き荒れる中、彼らの足音だけが静かに響いていた。城塞の入り口には崩れかけた石碑があり、そこに奇妙な文字が刻まれていた。イシェは石碑に手を当て、「これは...古代ヴォルダン語だ」と呟いた。「この遺跡はヴォルダンのものだったのか…」
テルヘルは鋭い眼光で石碑を睨みつけた。「ヴォルダンとは関係なく、この遺跡には必ず何かがあるはずだ」と断言した。ラーンの興奮を抑えきれず、「よし!早速中に入ろうぜ!」と叫び、城塞へと駆け込んだ。イシェはため息をつきながら、テルヘルに後を追い、「気を付けてください」と呟いた。
城塞内部は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。木枯らしが吹き抜ける隙間から冷たい風が流れ込み、寒さを増していた。ラーンは剣を手に、周囲を警戒しながら進んでいった。イシェは細心の注意を払いながら足取りを進め、テルヘルは常に周囲を警戒し、何かを探しているように見えた。
奥深くまで進むにつれて、壁には奇妙な模様が刻まれていた。イシェは「これは...魔術の記号だ」とつぶやいた。「ここには強力な魔法が込められている可能性がある」
その瞬間、床が崩れ始め、ラーンは下に落ちていく。イシェは驚いてラーンの手を掴もうとしたが、間に合わずにラーンは深淵へ落ちていった。「ラーン!」イシェの声が城塞内にこだました。テルヘルは冷静さを保ち、「落ち着け、イシェ。今、慌てても仕方がない」と声をかけた。そして、深い穴の底へと続く階段を探し始めた。
木枯らしが激しく吹き荒れ、城塞全体を揺らしていた。イシェは不安な気持ちを抑えながら、テルヘルと共に階段を降りていった。彼らはラーンを助け出すことができるのか、そしてこの遺跡に眠る真実とは何なのか。彼らの運命は、今まさに動き出そうとしていた。