ビレーの夜空には、朧月が薄っすらと浮かんでいた。ラーンは酒場でイシェとテルヘルが議論している横で、ぼんやりと酒を飲んでいた。
「あの遺跡は危険だと言ってるだろう!あの程度の報酬ではリスクに見合わない!」イシェの声が響く。
「リスク?いいんだ。俺たちは命を懸けて宝を探してるんじゃない。生きてる限りチャンスはある。」ラーンは豪快に笑った。
テルヘルは静かにテーブルに手を置いた。「私はその遺跡が必要だ。あなたたちに報酬以上のものをお約束する。」
ラーンの視線がテルヘルに向き、イシェも少し沈黙を崩した。
「あの遺跡には何かあるって聞いたことがあるんだ」ラーンがつぶやいた。
イシェは眉をひそめた。「噂話だ。信じる必要はない。」
「でもね、もし本当なら…」ラーンの目は朧月をじっと見つめていた。
「もし本当なら?」テルヘルは問いかけた。
ラーンの視線はイシェに注がれ、そして再びテルヘルへと向かい、静かに言った。「俺たちは、大穴を掘り当てられるかもしれない」
その夜、朧月の光の下、ビレーの街は眠りにつくように静まり返っていた。しかし、3人の影は遺跡へと消えていくように、静かに動き始めていた。