ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑いを上げていた。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の肩を軽く叩いた。「また無駄な金を使ってるよ。あの女、本当に遺跡の地図を持ってるのか？」
ラーンの顔は少し曇った。「まあ、大丈夫だ。テルヘルには何か秘密があるって気がするんだ。それに、あの目つき…きっと大穴にたどり着ける場所を知ってるはずだ」
イシェはため息をついた。「ラーン、いつもそうやって夢を語ってるけど…」
その時、店のドアが開き、テルヘルが入ってきた。黒曜石のように輝く髪が、薄暗い店内に影を落とす。彼女は視線をラーンとイシェに合わせると、口角をわずかに上げた。
「準備はいいか？明日はいよいよだ」
その夜、ビレーの街灯がぼんやりと灯りを落とす中、三人は街外れにある廃墟へと向かった。朧月が薄く空を照らす中で、彼らは遺跡へと続く崩れかけた階段を登っていった。
テルヘルは静かに地図を広げ、指で遺跡の構造を示した。「ここには古代文明の遺物があるらしい。危険だが、莫大な価値がある」
ラーンの目は輝いていた。「よし、行こうぜ！」
イシェは不安そうに後ろを振り返りながら、彼らに続いた。廃墟の中は暗く、湿った冷気が漂っていた。足元には崩れかけた石畳と、見慣れない植物が生い茂っている。
「ここは一体…」イシェが呟くと、テルヘルは静かに手を挙げた。
「Shh…聞こえるか？」
ラーンとイシェは耳を澄ました。遠くから、かすかな音が聞こえてきた。まるで風の音のようだが、どこか不気味に響く。
テルヘルは顔をしかめながら言った。「何かいる…注意しろ」
その時、遺跡の奥から、不気味な影がゆっくりと現れた。朧げな光の中で、その姿は曖昧ながらも、明らかに人間ではない何かだった。
ラーンの顔が青ざめた。「何だあれ…」
イシェは剣を握りしめながら、テルヘルに問いかけた。「どうする？」
テルヘルは冷たい視線で影を見つめながら言った。「戦うしかない」
そして、三人は遺跡の奥へと進み始めた。彼らの背後には、朧月が薄暗い空を照らし続け、その光の中で、影はゆっくりと動き始めた。