ビレーの朝の冷気が肌に刺さる。ラーンは大きくあくびをしながら、イシェが持ってくる温かいスープの匂いを嗅いだ。
「今日はどこ行くんだ?」
イシェは肩に荷物を担ぎながら、地図を広げた。「テルヘルさんの指示で、北西の廃墟だ。朝露で湿り気を帯びた石畳には、危険な魔物が潜んでいる可能性があるらしい」
ラーンの顔色が一瞬曇った。「またあの湿った場所か…イシェ、お前は本当にテルヘルさんの言うことを聞くんだな」
イシェは小さくため息をついた。「あの遺跡には、ヴォルダンが欲しがっている何かがあるらしい。テルヘルさんはそれを手に入れたいんだ。それに、あの遺跡の近くには、かつて大穴が見つかったという噂もあるじゃないか?」
ラーンの目が輝き始めた。「そうか!もしかしたら、今回は本当に大穴が見つかるかもしれないな!」
イシェは苦笑した。ラーンが夢中になる様子を見て、どこか切ない気持ちになった。朝露に濡れた石畳の上を、二人はテルヘルの後について歩み始めた。
廃墟の入り口には、薄暗い影がちらついているのが見えた。「気をつけろ、ラーン」イシェは剣を握りしめながら言った。
「わかってるよ!」ラーンは深く息を吸い込み、廃墟の中へと踏み込んだ。