ビレーの朝はいつも早かった。まだ薄暗い空の下、ラーンはイシェを起こしに行った。今日はテルヘルからの依頼だ。遺跡探索は日課だが、今回は様子が違った。テルヘルの顔色が険しく、言葉にも力があった。「あの遺跡だ。ヴォルダンとの国境に近い場所にある、禁じられた遺跡だ。朝霧が晴れる前に到着する必要がある」
イシェは不安げに言った。「朝霧が晴れる前に？あの遺跡は危険だと聞いたことがあるわ。伝説の魔物が棲んでるとも言われてるじゃないの？」
ラーンは笑い飛ばした。「そんなのただの噂だろ！大穴を掘り当ててやるぜ！」と豪語したが、内心も少し不安を感じていた。テルヘルはいつもより真剣な様子で、何か隠しているような気がした。
三人は朝霧の中に包まれた街を後にした。日差しが弱く、冷えた空気は肌に刺さる。視界は限られ、足元にはうっすらと霧が立ち込めていて、まるで幻想世界に迷い込んだかのようだった。
遺跡への道は険しく、深い森や急な崖を越えていく必要があった。イシェは慎重に足を運び、ラーンは前を先導し、テルヘルは後ろから二人の様子を見守っていた。沈黙が続く中、時折、鳥の鳴き声だけが響いていた。
朝霧が徐々に薄れていくにつれ、遺跡の姿が見えてきた。巨大な石造りの門がそびえ立ち、その周りを不気味な彫刻が飾っていた。門には奇妙な紋章が刻まれており、見る者の心をざわつかせるような魔力を感じさせた。
「ここが…禁じられた遺跡か…」イシェは震える声で言った。
ラーンの表情も少し硬くなった。「よし、準備だ！テルヘル、どうするんだ？」
テルヘルは深呼吸をし、剣を構えた。「遺跡の中央にある石碑を探せ。それが我々の目的だ」と静かに言った。そして三人は遺跡へと足を踏み入れた。
朝霧が完全に晴れる頃には、彼らは遺跡の奥深くまで足を踏み入れていた。