ビレーの賑やかな市場を抜け、三人は遺跡へと続く獣道を歩んでいた。ラーンはいつも通り大口を開けて笑い、イシェは眉間にしわを寄せて地図を広げている。テルヘルは二人を後ろから静かに見下ろしていた。
「今日はいい感じの気配があるぞ！」ラーンの声が響く。イシェは彼の無鉄砲さにため息をついた。「慎重にやろうと言ってるのに、いつもこうだ」と呟く。
遺跡の入り口には、朽ちた石碑が立っていた。テルヘルは碑文を解読し、「ここはかつてヴォルダンの支配下にあったようだ。危険な罠が仕掛けられている可能性がある」と警告した。ラーンは「そんなもん怖くない！」と豪快に笑うが、イシェは緊張した表情で周囲を観察している。
遺跡内部は暗く湿っていた。壁には奇妙な文字が刻まれており、床には崩れ落ちた石像が転がっている。テルヘルは慎重に足取りを運びながら、地図を広げて進む方向を確認する。ラーンの好奇心旺盛な性格を抑えるため、イシェが彼を牽制しながら後ろからついていく。
深い闇の中に沈む遺跡の中を進むにつれて、重苦しい空気が彼らを包み込む。突然、床から毒の矢が飛び出してラーンを狙った。イシェは素早くラーンの前に飛び出し、矢を受け止めた。しかし、その毒は強力で、イシェは苦しんで倒れ込んだ。
「イシェ！」ラーンは叫びながら駆け寄り、彼女の腕を支えた。「大丈夫か！？」イシェは顔色が悪く、呼吸が荒くなっていた。「……毒だ……早く逃げろ……」
テルヘルは冷静に状況を判断した。ラーンの感情的な行動を抑制し、イシェを助けるために必要なことを指示する。しかし、その目は冷酷で、どこか他人を見下すような輝きを放っていた。
「お前には、服従するしかない」と彼女はラーンに言った。「イシェを救うためには、私の指示に従え。」