「準備はいいか?」ラーンの豪快な声がビレーの朝の静けさを切り裂いた。イシェはいつものように眉間にしわを寄せながら、道具の確認に勤しんでいた。
「いつも急ぐなと言ってるだろう。ましてや今日はテルヘルが一緒だぞ」
「そうだな。今回はいい仕事になるって聞いたんだぞ!テルヘルも認めた遺跡なんだって!」ラーンは目を輝かせた。イシェはため息をついた。テルヘルの依頼を受けるようになってから、ラーンの冒険心に火が付いたように燃え盛っている。
「あの遺跡は危険だって聞いたぞ。何の保証もないのに、なぜそこまで熱望するんだ?」
「大穴だ!最高の大穴に違いない!」ラーンの瞳は輝いていた。「俺たちはそれを掘り当てて、ビレーを最高に幸せにするんだ!」
イシェは諦めたように肩をすくめた。「そうだな。お前がそう望むなら…」
テルヘルは、いつものように冷静に状況を把握していた。「準備は完了した。では、遺跡へ向かう。」彼女の言葉は力強く、揺るぎない決意を感じさせた。
遺跡への道は険しく、獣の咆哮がこだまして不安を掻き立てる。しかしラーンの前向きな態度とテルヘルの冷静な判断で、なんとか進むことができた。そしてついに、遺跡にたどり着いた。
それは巨大な石造りの門が崩れ落ち、内部へと続く階段がむき出しになっている。埃っぽく、静寂が支配する空間だった。
「ここだ…」テルヘルは静かに言った。「伝説の遺物がある場所だ」
ラーンは興奮を抑えきれず、「よし!いくぞ!」と叫びながら遺跡の中へ飛び込んだ。イシェは彼に続くように、テルヘルと共に慎重に足を踏み入れた。
遺跡内部は暗く、不気味な雰囲気が漂っていた。壁には古びた絵画が描かれており、かつて栄えた文明の痕跡を感じさせた。
「ここには何かがある」イシェは鋭い目で周囲を警戒しながら言った。「何かが…見ているような気がする」
その時、突然、地面が激しく揺れた。天井から石が崩れ落ちてくる。ラーンは咄嗟にイシェを守り、テルヘルも冷静に状況を判断した。
「これは罠だ!」テルヘルは叫んだ。「すぐに逃げろ!」
しかし、すでに遅かった。遺跡の奥底から、巨大な影が姿を現した。それは、かつてこの遺跡を守っていたと言われる守護神だった。その目は赤く燃え盛っていて、鋭い牙を剥き出しにして襲いかかってきた。