「よし、今回はあの洞窟だ!」ラーンが地図を広げ、熱っぽく言った。イシェは眉間に皺を寄せながら地図を覗き込んだ。「またあそこに?あの洞窟はすでに3回も調査したでしょう。何も見つからなかったはずです」。
ラーンの豪快な笑い声が洞窟の入り口にこだました。「そんなこと言わずに、行こうぜ!いつか大穴を見つけるぞ!」イシェはため息をついた。ラーンの楽観的な性格は、時に彼女を不安にさせる。だが、彼の熱意にはいつも惹きつけられるものがあった。
テルヘルは二つの赤い目を鋭く光らせながら言った。「今回は慎重に進もう。あの洞窟はヴォルダン兵が以前調査していたという噂だ。何か危険な罠があるかもしれない」。ラーンは少しだけ顔色が変わった。「ヴォルダンか…」。テルヘルの言葉はいつも冷静で、しかし重みが違う。
彼らは洞窟の入り口に立ち止まり、互いの顔を見合わせた。深い闇の中に吸い込まれるように、三人は一歩ずつ洞窟へと進んでいった。壁には苔が生え、湿った冷気が漂う。足元には石が散らばり、進路を阻む。
「ここは…」イシェは言葉を失った。洞窟の奥深く、広大な空間に広がる光景に息をのんだ。そこはまるで別の世界だった。天井から伸びる巨大な柱、壁には複雑な模様が刻まれた石板…そして、中心には光り輝く巨大な結晶があった。
「これは…」ラーンは目を丸くした。「大穴だ!」イシェも言葉を失った。それは想像を絶する美しさで、同時に圧倒的な力を感じさせるものだった。まるで最果ての世界の秘密を垣間見たような気がした。
その時、洞窟の奥深くから不気味な音が響き渡った。ラーンが剣を抜く。イシェは緊張した表情で周囲を見回す。テルヘルは静かに手を前に出し、何かを察知しているようだった。三人は息を潜め、音のする方へとゆっくりと歩み始めた。
「何だ…?」ラーンの声が震えていた。洞窟の奥には巨大な影が立っていた。それはヴォルダンの兵士の姿だった。彼らの背後には、さらに多くの兵士の姿が見えた。
「逃げろ!」テルヘルが叫んだ。三人は立ち尽くすことなく、洞窟を駆け出すように逃げていった。しかし、兵士たちはすでに彼らを追いかけていた。
最果ての輝きを前に、三人は激しい戦いに巻き込まれることになる。