ビレーの酒場「錆びた剣」が賑わう夜だった。ラーンはイシェと向かい合い、満面の笑みを浮かべていた。「あの遺跡の奥深くで、金貨の山を見つけたって噂だぞ！」
イシェは眉をひそめた。「そんな噂、聞いたことないわよ。それに、あの遺跡は危険だって言われてるじゃない。」
「大丈夫、大丈夫！俺が先頭を切って開拓してやるから」ラーンは豪快に笑って言った。イシェの冷静な判断とラーンの猪突猛進な性格は、いつも対照的だった。
その時、背後から声がした。「噂を信じるのはやめなさい」それは、テルヘルだった。彼女は鋭い眼差しで二人を見据えていた。「あの遺跡には罠が仕掛けられている。最低でも三人の冒険者チームが命を落としたという話だ。」
ラーンは少しだけ顔色が変わったが、「そんなこと言っても、俺達は探検隊じゃないんだ。ちょっとした宝探しだ」と強がるように言った。イシェはテルヘルの警告を真剣に受け止めていた。「では、危険な場所は避けましょう。最低限の探索で様子を見るのはどう？」
ラーンの冒険心は抑えきれないようだった。「わかったわかった。でも、何かしら見つけられるだろうな！」彼は目を輝かせながら言った。
翌日、三人は遺跡へ向かった。テルヘルが地図を広げ、慎重に道筋を指示する。ラーンはイシェの制止を振り切って、危険な場所へ進んでいくこともあった。イシェは常に冷静さを保ち、二人の安全を確保しようと努めた。
遺跡の奥深くで、彼らは古い石碑を発見した。石碑には奇妙な文字が刻まれており、テルヘルは真剣な表情で読み解こうとした。
「これは...」テルヘルは言葉を詰まらせた。「ヴォルダンに関するもの...最低限の情報しか得られないが...。」彼女は拳を握りしめた。復讐への執念が、彼女の瞳に燃えていた。