ラーンの豪快な笑いがビレーの朝の静けさを打ち破った。
「おいイシェ、今日は俺が先陣切って遺跡へ行くぞ！大穴は今日こそ見つける！」
イシェはいつものように眉間にしわを寄せていた。「またか、ラーン。そんな安易な期待を胸に抱くから失敗ばかりするんだ」と呟きながら、準備を整えた。
「失敗なんてないさ、イシェ。ほら、テルヘルさんも今日一緒に来てくれるって聞いたぞ？あの人の知識があれば、きっと何か発見があるはずだ」
テルヘルはヴォルダンとの因縁を胸に秘めた謎の女だ。冷徹で計算高い彼女は、遺跡探索というより復讐のための情報収集に燃えているように見えた。ラーンとイシェには高額な報酬を約束し、遺跡でのサポートと遺物の独占権を要求したのだ。
「よし、準備はいいぞ！今日は俺たちの運命を変える日になる！」
ラーンの熱意に押されるまま、3人はビレーの郊外にある遺跡へと向かった。廃墟となった石造りの建物、崩れかけた壁、そしてそこかしこに広がる危険な罠。
「ここは以前にも探索した場所だな…」イシェは懐中電灯を手に慎重に進んでいった。「あの時、天井から石が落ちてきたのを覚えているか？あの場所は避けたほうがいい」
ラーンの耳には、イシェの注意喚起よりもテルヘルの低い声が聞こえた。「あの奥にある部屋だ。そこには何かがあるはずだ」
テルヘルは遺跡の地図を指さし、自信に満ちた声で言った。「過去の記録によると、そこはヴォルダンがかつて深く関与していた場所らしい。何か重要な手がかりが見つかるかもしれない」
ラーンの胸が高鳴った。大穴、そしてヴォルダンの秘密…。冒険と復讐の二つの物語が彼らを待ち受けている。