「よし、今回はあの崩れかけた塔だ。噂では地下に隠し部屋があるらしいぞ」ラーンが目を輝かせながら地図を広げた。イシェは眉間に皺を寄せた。「また噂話か?あの塔は危険だって聞いたことがあるわよ。崩落したら終わりよ」
「大丈夫大丈夫、俺がしっかり守るからな!」ラーンの豪快な笑いにイシェはため息をついた。いつも通り、ラーンの計画性のない行動に振り回される日々だ。だが、彼には不思議な魅力があるし、何より幼馴染の友情を大切に思っている。
その時、テルヘルが鋭い視線で地図を指さした。「あの塔はヴォルダン軍がかつて拠点にしていた場所だ。遺跡調査の結果、地下に武器庫がある可能性が高い」彼女の言葉にラーンとイシェは息をのんだ。武器庫?それは大穴になるかもしれない。
「よし、今回は大金持ちになれるぞ!」ラーンの目は金貨で輝き、イシェも不意に胸の高鳴りを覚えた。しかし、テルヘルは冷静な表情で言った。「武器庫はヴォルダンにとって重要な情報だ。我々が発見すれば、ヴォルダンは必ず邪魔しにくるだろう。十分な準備が必要だ」
ラーンの無計画さにはいつも呆れているが、イシェは彼の行動力と仲間への優しさを心から尊敬している。そしてテルヘルは冷静沈着で目的意識の高い女性だが、どこか孤独を抱えているように見えた。三人にとって遺跡探索は単なる金儲けではないのかもしれない。それぞれの過去や夢が交錯する場所、それが遺跡なのだ。
彼らはビレーの街を背に、崩れかけた塔へと向かう。夕暮れの光が彼らの影を長く伸ばし、先の見えない未来に向かって歩みを進めていった。