「おい、イシェ、あれってどうだ?」ラーンが錆びついた剣を拾い上げ、埃を払うように振った。イシェは眉間に皺を寄せながら、ラーンの肩越しに見つめていた遺跡の壁画に視線を戻した。「ただの模様じゃないか。また無駄な時間を過ごすつもりか?」
「いや、ちょっと待てよ。」ラーンは剣を地面に突き立て、壁画に近づいていった。「この模様、よく見たらなんか…文字みたいだな?もしかしたら、ここには何か書かれているんじゃないか?」イシェはため息をつきながら、ラーンの後を追った。
「そんなもの、ただの迷信だ。」テルヘルが冷たく言った。「遺跡の壁画には、多くの場合、警告や呪文が記されている。触れるなと言っているのかもしれないぞ。」
ラーンの目は輝いていた。「そうか!もしこれが宝のありかを指しているなら…?」イシェはラーンの熱意に圧倒されつつも、理性的な思考を維持しようと努めた。「でも、テルヘルさんが言ってるように、危険かもしれないよ。何かの罠だったりして…」
「大丈夫だ!」ラーンは剣を手に取り、壁画をなぞり始めた。「この模様を解読できれば、きっと大発見があるはずだ!」イシェはため息をつきながら、ラーンの行動を止めようとしたが、彼を止めることはできなかった。テルヘルは静かに微笑んだ。ラーンの行動は愚かかもしれないが、彼女にとっては都合が良い。彼の行動は、彼女が求める情報を手に入れるための鍵になる可能性があったからだ。
「よし、わかった!」ラーンは壁画に刻まれた文字を指差した。「これは…何かしらの暗号みたいだ!イシェ、お前は頭がいいだろ?これ解読できるか?」イシェはため息をつきながら、壁画に目をやった。ラーンの熱意に押され、彼女は仕方なく暗号の解読に取り掛かった。
テルヘルは二人を見つめながら、小さく呟いた。「面白い…。」彼女の目は、ラーンの行動を冷静に分析していた。彼の無謀さは、彼女にとって予期せぬ幸運をもたらす可能性があったのだ。そして、その幸運は、ヴォルダンへの復讐に近づくための重要な手がかりとなるかもしれない。