ラーンが興奮気味に遺跡の入口を指さす。「おいイシェ、見てみろ！今回は絶対に大穴だ！」イシェは眉間にしわを寄せながら、ラーンの背後から地図を広げた。「落ち着いて、ラーン。あの崩れた壁は以前にも見た覚えがあるぞ。もしかしたらただの残骸かもしれない」
「そんなことないって！ほら、あの光！」ラーンが指さす方向には、崩れた壁の隙間から薄暗い光が漏れていた。「あれは宝石だ！きっとダイヤモンドかルビーだ！」ラーンの瞳は熱く輝き、イシェも思わず息を呑んだ。確かに、あの光はただの石灯りではなさそうだ。
「よし、準備はいいか？」ラーンは剣を手に取り、イシェにニヤリと笑いかけた。「今回は俺が先導だ！」ラーンの足取りは軽快で、まるで幼い頃にこの遺跡の森で鬼ごっこをしていた時のように、無邪気に駆け出していく。
イシェはため息をつきながら、テルヘルの指示に従うように後を追った。「気を付けて、ラーン」その言葉は、荒れ果てた遺跡の奥底へと消えていった。
遺跡の中は薄暗く、湿った空気が漂っていた。壁には苔が生え茂り、床には石が散らばっている。ラーンの足音だけが響き渡り、不気味な静寂を破る。イシェは緊張した面持ちで周囲を見回し、常にラーンの背後を警戒していた。
「おい、イシェ！見てみろ！」ラーンの声が遠くから聞こえた。イシェが急いで駆け寄ると、ラーンは興奮気味に巨大な石棺の前に立っていた。石棺の表面には、複雑な模様が刻まれており、その中心には宝石が埋め込まれていた。
「これは…！」イシェは言葉を失った。宝石の輝きは、まるで生きているかのように脈動しているようだった。「ラーン、これは…」
その時、石棺から不気味な音が響き渡った。それはまるで、眠りから覚める獣の唸り声のようだった。石棺の表面に刻まれた模様が光り始め、その光は急速に強くなり、ついに石棺全体を包み込んだ。
ラーンは目を輝かせながら、「やった！大穴だ！」と叫んだ。しかし、イシェは恐怖で体が硬直していた。何かがおかしい。この光、そしてこの音…これは単なる遺跡の宝ではない。何か恐ろしいものが目覚めようとしているのだ。
石棺から黒い煙が立ち上り、その中に不気味な影が現れた。ラーンは剣を構え、勇敢に立ち向かった。「来い！化け物め！」
しかし、彼の攻撃は影を傷つけることすらできなかった。影はゆっくりとラーンに近づき、彼の体に触れると同時に、ラーンの体が黒く染まり始めた。ラーンは苦しみながら叫んだが、その声はすぐに消えていった。
イシェは絶望的な表情で、ラーンに向かって手を伸ばした。「ラーン！」
その時、テルヘルが現れ、影に剣を突き刺した。影は一瞬の間、怯んだように光りを弱め、ラーンの体から離れた。しかし、影はすぐに復活し、今度はテルヘルに向かって襲いかかってきた。
イシェは恐怖で言葉を失ったが、テルヘルの冷静な指示に従い、影の攻撃をかわしながら逃げることを選択した。
「落ち着いて、イシェ。あの男は暴走しているだけだ。」テルヘルは冷静に状況を分析し、ラーンを制止する言葉を発した。「彼を止められるのは…」