ビレーの賑やかな市場を背に、ラーンとイシェはテルヘルの指示に従い、山道へと足を踏み入れた。日差しが容赦なく照りつける中、二人は汗だくになりながら、重い荷物を背負って険しい道を進む。
「本当にここなのか? この先、遺跡なんてあるわけないだろう」
ラーンが不機嫌そうに呟くと、イシェはため息をついた。「テルヘルには言わないで。あの人の目は鋭いからすぐに嘘だとわかるよ。」
テルヘルは彼らを雇う際に、この遺跡について詳細を語らなかった。ただ、「ヴォルダンに危害を加えるための重要な鍵が眠っている」とだけ告げてきた。その言葉にラーンは興奮したが、イシェは不安を感じていた。
日が暮れ始めると、二人はようやく遺跡へと続く洞窟の前にたどり着いた。薄暗い洞窟の入り口から漂ってくる湿った空気は不気味だった。
「ここが本当に最後の目的地なのか?」
ラーンの声が洞窟内に響き渡る。すると、テルヘルが後ろから近づいてきて、冷たく言った。
「そうだよ。そして、この遺跡にはヴォルダンを倒すための武器がある。」
三人は洞窟に足を踏み入れた。内部は狭く、湿った石壁が一面を覆っていた。足元には、苔むした石畳が広がっている。
しばらく歩くと、洞窟の奥深くで何やら光が揺らめいているのが見えた。近づいてみると、それは巨大な石碑だった。その表面には、複雑な模様が刻まれており、不思議な光を放っている。
「これは...!」
ラーンの声が震える。テルヘルは興奮した様子で石碑に手を伸ばそうとしたその時、突然の轟音が洞窟中に響き渡った。
遠くから人々の叫び声と、激しい物音や破壊音が聞こえてくる。
「何だ?あの音は...」
イシェが不安げに言った。ラーンも顔色が変わる。「暴動だ!ビレーで何か起こっているぞ!」
テルヘルは一瞬考え込んだ後、石碑を指さして言った。
「この遺跡から脱出する前に、あの石碑の秘密を解き明かさなければならぬ。」
三人は慌てて石碑に向かった。しかし、洞窟の入り口付近から、人影が近づいてくるのが見える。
「あの人たち...!」
イシェは息をのんだ。そこには、武装した兵士たちが押し寄せてきていた。彼らの顔には、狂気に満ちた表情が浮かんでいた。
「ヴォルダン軍だ!」
ラーンが叫んだ。三人は立ち向かう準備をするも、圧倒的な数の差に絶望を感じた。