ラーンの大斧が遺跡の石壁を叩き割る音が、埃っぽい空間に響き渡った。イシェは眉間に皺を寄せながら、崩れかけた天井を見上げた。「またか、ラーン。あの部屋に何かあったって保証はないだろう。」
「でもな、イシェ、あの壁画みてえなもん、古代の地図じゃなかったのか?大穴への手がかりが書いてあるって聞いたんだぞ!」
ラーンの瞳は興奮で輝いていたが、イシェにはただの迷信にしか聞こえなかった。それでも、テルヘルの高額な報酬と、この遺跡から何かを掘り出したいという漠然とした希望から、彼女は仕方なく彼に従うしかなかった。
「地図だと?そんな曖昧なものに惑わされるな、ラーン。遺跡探検は慎重さと計画性が肝心だぞ。」テルヘルが鋭い視線でラーンを睨みつけた。彼女の言葉にはいつも通りの冷酷さが込められていたが、ラーンの無謀さにイシェも少し不安を感じていた。
「おいおい、テルヘル、そんなに怒るなよ。俺だって慎重にやってるんだぜ!」ラーンは苦笑いしながら斧を肩に担い直した。「よし、イシェ、お前は後ろからチェックしてくれ!何かあったらすぐに教えてくれ!」
イシェはため息をつきながら、ラーンの後を追った。狭い通路を進んでいくと、壁には確かに古代の文字が刻まれていた。だが、イシェにはただの抽象的な模様にしか見えなかった。
「ほら、見てみろよイシェ!地図だぞ!」ラーンは興奮気味に壁を指差した。
しかしその瞬間、床から何かが飛び出した。鋭い爪と牙を持つ巨大な獣が、咆哮とともにラーンへと襲いかかった。