ラーンが石の扉を押し開けた時、埃っぽい空気が彼らを包んだ。イシェは鼻をつまんで「またここか…」と呟いた。薄暗い通路は湿った臭いとカビの匂いで充満していた。
「よし、行こうぜ!」
ラーンの元気な声が響く。彼の後ろ姿が火の torches の光に浮かび上がる。イシェは小さくため息をつき、テルヘルの後をついていった。彼女の黒いマントが静かに揺れている。いつも通り、彼女は表情一つ変えない。
彼らは遺跡の奥深くへと進んでいく。壁には奇妙な模様が刻まれており、時折、不気味な影が壁に映る。ラーンの足取りは軽快だが、イシェは緊張を隠せない。
「ここ、なんか嫌な予感するなぁ…」
イシェが呟くと、テルヘルが振り返った。彼女の鋭い瞳は暗闇を切り裂くように光っていた。「予感? そんなものに頼るな。」
すると、突然、地響きがした。天井から石が崩れ落ち、ラーンが身をかわすのが間に合わなかった。彼はよろめきながら壁に手をついて立ち上がった。
「おい! 何だこれは!」
ラーンの怒号がエコーのように響く。イシェは恐怖で体が震えていることに気づいた。「何かいるんじゃないのか…」
その時、通路の奥から赤い光が漏れてきた。ラーンの表情が一瞬険しく変わった。
「行くぞ!」
彼は剣を抜き、テルヘルとイシェに合図を送った。三人は赤い光に向かってゆっくりと進んでいく。そして、ついにその光源を見つけた時、彼らの息は止まった。
巨大な祭壇がそこに存在していた。祭壇の上には、脈打つような赤い光を放つ宝石が置かれていた。宝石の周りには、人骨が散乱している。
「これは…」
イシェの言葉は途絶えた。ラーンの目は宝石に釘付けになっていた。「大穴…だ」彼の声は震えていた。
その時、暗闇から何かが動き始めた。影が彼らに向かってゆっくりと迫ってくる。ラーンは剣を握りしめ、テルヘルは daggers を抜き出した。イシェは恐怖で体が硬直していた。
そして、ついに影が姿を現した。それは、 grotesquely twisted 、腐敗した姿の怪物だった。その目は赤い光を放ち、鋭い牙をむき出しにしていた。
「逃げろ!」
テルヘルの叫び声が響く。ラーンは剣を振り下ろしたが、怪物はそれを軽々とかわし、彼に襲いかかった。イシェは絶望的な思いで目を閉じた。
その時、激しい光が周囲を包んだ。イシェは目を覚まし、目の前に広がる光景を見て言葉を失った。ラーンの姿は消えていた。代わりに、宝石が放つ赤い光が強くなり、空間に奇妙な模様を描き出していた。そして、その中心には、ラーンが握りしめていたはずの剣が浮かんでいた。
「ラーン…」
イシェの声が震えた。テルヘルは冷静に状況を見極めていた。彼女は何かを感じ取ったようだ。
「これは…始まりの兆候だ」
彼女の言葉は重く響き渡った。そして、暗転した…。