「よし、今日はあの遺跡だな」
ラーンがそう言うと、イシェはため息をついた。いつもより早く朝が来たせいで眠い上に、ラーンの無計画さにイライラしていたのだ。
「また大穴にでもなると思うなよ。あの遺跡、危険だって聞いたぞ」
「大丈夫だ。俺が守ってやるから」
ラーンの豪快な笑いは、イシェの不安をさらに増させた。
テルヘルは二人が言い争う様子を見て、唇を少しだけ歪ませた。
「準備はいいか?」
彼女の鋭い視線に、ラーンとイシェは黙って頷いた。
遺跡への入り口は、崩れかけた石の階段だった。薄暗い中に差し込む光が、埃っぽい空気をさらに不気味に見せている。
「よし、俺が先導だ」
ラーンの背中は、いつもより硬く緊張していた。イシェは彼の後ろを歩きながら、何かがおかしいと感じ始めた。
遺跡の中は予想以上に広かった。壁には古びた絵画が描かれており、床には謎のシンボルが刻まれていた。
「これは…!」
ラーンが石柱に手を触れた瞬間、地面が激しく揺れ始めた。天井から石が崩れ落ち、二人は慌てて身をかわした。
「なっ、何だこれは!」
イシェは驚愕の声を上げた。
その時、テルヘルが何かを呟いたように聞こえた。
「始まったか…」
彼女の瞳に映っていたのは、遺跡の奥深くで蠢く影だった。それはまるで、何者かの意志が遺跡全体を操っているようにも見えた。
ラーンの大穴への夢は、この遺跡で終わりを迎えるのだろうか?それとも、何か別のものが動き出すのか…? そして、テルヘルが隠している真実は一体何なのか…。