ビレーの薄暗い酒場の一角で、ラーンが酒をぐいっと飲み干す。イシェは眉間に皺を寄せながら彼の様子を観察していた。「また遺跡探しの話か?」とイシェが言うとラーンはにやりと笑った。「ああ、今日は特にいい場所見つけたんだって!テルヘルが言うには、あの遺跡には古代の王の墓があるらしいぞ」
イシェはため息をついた。「またそんな夢物語?ラーン、あのテルヘルは本当のこと言ってないんじゃないか?そもそもなぜ彼女がこんな辺境の街に来たのか、まるで謎だ」 ラーンの表情は曇った。「まあな…でも、あの遺跡から何か見つかったらいいんだろ?俺たちには今それしかないだろ?」
イシェはラーンの言葉を無視して酒を一口飲んだ。テルヘルの存在は彼女にとって謎だった。その鋭い眼光と常に隠された目的意識、そしてヴォルダンへの復讐という曖昧な目標。全てが不自然に思えた。
次の日、三人は遺跡へと向かった。深い森の中を進み、崩れかけた石造りの門の前で立ち止まった。ラーンは興奮気味に剣を構え、「さあ、大穴だ!」と叫んだ。イシェは不安な気持ちを抱きながらも、テルヘルと共に遺跡へ足を踏み入れた。
内部は暗く湿っていた。壁には奇妙な模様が刻まれており、どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。「ここはかつての王宮の一部らしい」とテルヘルが言った。「この遺跡には王の墓だけでなく、強力な魔法アイテムも眠っているという伝説がある…」
イシェはテルヘルの言葉に耳を傾けながら、同時にラーンの様子を観察していた。彼はまるで興奮状態になっており、周りを見回し、何かを探しているかのようだった。彼の目はどこか虚ろで、まるで暗示にかかっているようにも見えた。
その時、突然、地面が揺れ始めた。石が崩れ落ち、埃が舞い上がる中、ラーンは叫んだ。「ここに何かがいる!早く逃げろ!」イシェは驚きながらも、テルヘルと共にラーンの後を追い、遺跡から脱出しようとした。しかし、出口には巨大な影が立ちはだかるのだった…。